4月より公開している『ラッカは静かに虐殺されている』をUPLINK渋谷にて観てきました。
衝撃的だった。。
予告編
「我々が勝つか、皆殺しにされるかだ」
この言葉が、ジャーナリストの口から普通、出てくるんでしょうか。
不条理に対抗するために想像を絶するほどの危険を覚悟している、市民ジャーナリストたちを追ったドキュメンタリー映画です。
公式サイトよりあらすじを説明しますと
戦後史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦。
2014年6月、その内戦において過激思想と武力で勢力を拡大する「イスラム国」(IS)がシリア北部の街ラッカを制圧した。
かつて「ユーフラテス川の花嫁」と呼ばれるほど美しかった街はISの首都とされ一変する。爆撃で廃墟と化した街では残忍な公開処刑が繰り返され、市民は常に死の恐怖と隣り合わせの生活を強いられていた。
海外メディアも報じることができない惨状を国際社会に伝えるため、市民ジャーナリスト集団“RBSS”(Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)が秘密裡に結成された。
彼らはスマホを武器に「街の真実」を次々とSNSに投稿、そのショッキングな映像に世界が騒然となるも、RBSSの発信力に脅威を感じたISは直ぐにメンバーの暗殺計画に乗り出す――。
引用:『ラッカは静かに虐殺されている』公式HP
このような内容です。
トラウマと理念
今でこそISは力尽きたという印象がありますが、その存在は2014年に台頭して以来ずっと、国際社会に強いインパクトを与え続けてきました。
2014年というと自分が高校3年生の時。
当時ISが台頭しましたというニュースをみて
「この人たち、わけのわからん思想が沁みついちゃってる?!ただの無鉄砲な暴力集団だと思ってた・・!」
と絶望してました。受験生で神経質になっていたこともあって、ずっと吐きそうな気分だったな。。
そんな、自分の中ではトラウマ気味なISに対して果敢に戦い続けているRBSSのメンバーの姿には、ただならぬ覚悟を感じます。
その覚悟が「我々が勝つか、皆殺しにされるかだ」という言葉に集約されていると思ってます。
いくら目の前に惨事が広がっていたとしても、そのことを伝えるために行動を起こすことで命を落とすかもしれないという帰路に立たされた時、それでも行動を起こすという判断のできる人はそんなにいないんじゃないかな、と思うんですよね
実際にRBSSのメンバーが殺されてしまう過程も、映画内では生々しく描かれています。
もちろん残された彼らが心穏やかでいられるわけもなく、今の精神状態でドキュメンタリーとして撮影されるのは酷じゃないの?というシーンが何度か出てきます。
やはりそれでも、何度も住処を変えなければならなくなっても、ヨーロッパで移民排斥のデモを目の当たりにしても、彼らは情報を発信し続けるという手段を取ります。
だからこそ彼らが常に不安・トラウマと戦い続けていること、自分たちの使命を命がけで守ろうとする姿勢がびしびし伝わってくるんですけどね。
ラストシーンがひどく印象に残っています。
21世紀的メディアのあるべき姿
映画を見ている途中で強く感じたのは、このテロ集団と市民ジャーナリスト達の闘いが非常に21世紀的であるということ。
彼らの闘いとはモノとモノをぶつけ合う物理的な戦いではなく、情報と情報を放出させ合う実態の見えないフィールドで行われています。
ISがラッカ市民は豊かな生活を送っている主張すれば、RBSSが市内を盗撮し実際には市民が抑圧されている様子をSNSに投稿する。
それに怒ったISは情報統制を行うために市内のパラボラアンテナを徹底的に破壊する。RBSSはデータの暗号化をすることによってISの検閲をくぐり抜けながらも国外へと情報を発信する。
このような高度な情報戦が、シリアで行われています。IS側にはITのプロが雇われているし、RBSSはもともとメディア関係には素人であっても情報を暗号化できる程の高いスキルを持っている。
情報というものがこれ程高度な技術によって操作され私たちのもとに届いているのだとすれば、その背景を知る必要があるし、情報を受け取る自分たちも相応のメディアリテラシーを持ち合わせなければいけないですね。
最後に
一応、現在ISは公式的には「壊滅」されています。
しかしISの思想を継いだ輩は世界中にまだごまんと存在します。彼らがテロを起こす可能性はまだ十分にあります。ISがまたどこかで大規模な結集を図る可能性も否定できません。
こうした状況が今も続いている以上、RBSSの活動は続くはずです。
RBSSへの支援は下記リンクから可能だそうです
Raqqa is Being Slaughtered Silently
映画は6月末まで公開しているそうです。
自分も、RBSSの活動を全力で応援していきますぞ
公式サイト